4年に一度行われる馬術の世界最高峰の大会、Alltech FEI World Equestrian Games(世界馬術選手権大会)。今年はフランス・ノルマンディーで15日間に亘り、76カ国から1000人の選手、1000頭の馬が集まり、8つの競技が行われました。この大会は馬術界ではオリンピック・パラリンピックと並ぶ最高の舞台です。有料入場者数は50万人、テレビ視聴者は5億人とも言われています。ヨーロッパではサッカーW杯と同じくらい人気のある大会です。8つの競技のひとつ、パラドレッサージは障害者によるドレッサージ(馬場馬術)競技です。もちろんパラリンピックでも正式種目になっています。そのパラドレッサージ競技の日本代表チームのスタッフとして、OCFL英語通訳・翻訳科主任・中嶋千秋先生が現地に派遣されました!中嶋先生の現地レポートをどうぞ。
8月下旬から約2週間、オランダとフランスに滞在しました。オランダはパラドレッサージ日本代表の鎮守選手の乗馬「セレンディピティ号」の練習拠点で、馬のオーナーもトレーナーもオランダ人です。オランダの方たちはほとんどみんな英語がペラペラなので、英語ができれば街中でもコミュニケーションにはまったく困りません。でも馬術は専門用語がたくさんあるので、トレーニング中の通訳は英語ができるだけでは務まりません。それに、トレーニング中は人馬が動いていますから、常に次のアクションを考えながらの通訳です。トレーナーと選手双方から信頼をいただけるように、タイムリーで的確な訳出を重視します。
オランダはあいにく連日の雨で、気温も18度くらいで肌寒いくらいでしたが、オランダ人コーディネーターのお宅にお邪魔したり、パラリンピック金メダリストのヨープ・ストッケルさん夫妻に伝統的なオランダの街に連れて行っていただいたりと短い期間でしたが充実したステイでした。
アムステルダムからパリまでは国際列車タリスで移動。時速300kmでヨーロッパの穀倉地帯を駆け抜けます。パリから車で3時間、ようやく今回の大会開催地・ノルマンディー県カーン市に到着しました。カーンはイギリス史・英語史を勉強した人なら誰でも知っている「ノルマン人の征服」の主役、征服王ウィリアムの居城があった地です。そして、第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦の行われた地でもあります。今も高く聳え立つ中世の城壁と第2次世界大戦の銃痕が残る街並み。パラドレッサージ会場のラ・プレリー競馬場はそれらから車で5分ほどの距離にあります。広く美しい会場には特設スタジアムが設置され、試合ではスタンドが大勢の観客で埋まりました。
日本チームはコーチ、グルーム(厩務員)、コーディネーターがオランダ人、あとのスタッフ・選手が日本人。私は日本チーム内の通訳をはじめ、監督会議への同行通訳、現地組織委員会スタッフとのやりとりなど、コミュニケーションの橋渡し役を務めました。そうそう、日本代表選手がTVでインタビューされたので、その通訳もしましたよ。それに私は少しフランス語も話せるので、それが現地の皆さんにとっても喜ばれ、コミュニケーションが潤滑に取れたことが大変役に立ちました。OCFLでも中国語、韓国語の専攻があるのはご存知の通りですが、選択科目でスペイン語やフランス語も取れるので、今後国際的に活躍したい方たちは第2外国語もぜひ勉強しましょう。
ノルマンディー入りしてすぐに開会式に参加、そしてその翌日からトレーニング、開会式の三日後には本番・・・と毎日めまぐるしいスケジュールでした。大雨からはじまり、さまざまなアクシデントがあったものの、人馬ともに故障もなく無事に競技を終えることができました。スタッフとしては、それが何よりです。
日本も6年後には2020東京オリンピック・パラリンピック大会が開催されます。最高のホスピタリティー(おもてなし)の心を持って、海外から大勢来られる訪日外国人を迎えられる準備を今から始めましょう!